すずひらのブログ

気の向くままに書き散らしてるブログ

【本の紹介】融解するオタク・サブカル・ヤンキー(熊代亨 著)

『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』という本を読んだ。とても良い本だったので、簡単ながら内容の紹介と感想を書こうと思う。

特に以下のような人にこそ読んでほしい。

 

・昔はオタクでアニメとか大好きだったけど、30過ぎぐらいからそれらコンテンツを楽しむのが辛くなってきた

・でもオタク趣味を辞めたらアイデンティティが崩壊しそうで辛い

 

オタク趣味を続けるのも辞めるのも辛いっていう袋小路に追い込まれた人は、この本を読むと袋小路から抜け出すヒントを得られると思う。

内容を簡単に紹介

本書のテーマは、「かつて存在したオタク・サブカル好き・ヤンキーは一体なぜ生まれて、どこに消えてしまったのか」というものだ。

本書内では、このテーマを以下のように細分化して、それぞれ著者の考察が書かれている。

 

・そもそもオタク、サブカル、ヤンキーってどんな人たち?

・なんで誕生したの?

・最近あまり見かけなくなったけど、どこに消えたの?

・オタク趣味がアイデンティティと紐付き過ぎると色々な弊害がある

・オタク趣味とアイデンティティの繋がりを弱めて、軟着陸する方法

 

各テーマに対して、精神科医である著者ならではの観点で考察がされている。特にオタク趣味とアイデンティティについての考察は鋭くて、読み応えがあった。

オタク趣味が自分のアイデンティティと密接に繋がっている実感のある30歳オーバーの人は、ドキッとさせられる文章が随所にあると思う。

 

内容の紹介は簡単だけどこれぐらいで。

本のテーマにピンと来た人は読んで損はない。逆に、テーマを見て「オタク趣味とアイデンティティ?なんのこっちゃ」って人は読まなくてもいいと思う。

個人的な感想

僕自身、20代中盤ごろまではかなり重度なアニメオタクだった。しかしその後、仕事の忙しさが増していったり、学生服を着たキャラクターたちへの感情移入が年々厳しくなっていき、30代中盤となった現在は年に数本のアニメを見る程度の単なる「ちょっとアニメも見ます」程度な人間だ。まさに本書で書かれた「消えたオタク」の一人である。

僕にとって、「アニメが大好きな自分」というのはアイデンティティの根幹をなす要素だった。なので年々アニメを楽しみにくくなっていく自分がとにかく不安だった。このままだと何者でもない人になってしまう。今までの人生を無駄にしてしまうって本気で思っていた。

今思い返すと、アニメを見るのなんて所詮は趣味でしかないわけで、別にその趣味を持っているからといって何者かであったわけではない。それに趣味で楽しんでいた思い出はいつまでも記憶に残るので、無駄だったわけでもない。たくさん楽しい時間を過ごせたんだから十分だ。

思い返すとそうなんだけど、アニメを楽しみにくくなっている渦中にいた20代中盤~30歳ぐらいまでの自分には、「アニメなんて別に趣味」なんてドライには考えられなかった。だってアイデンティティなんだから。

そんな自分の変化とは関係なく時は流れ、時と共に一層アニメを楽しみにくくなっていく自分。

でも結局は時が解決した。時の流れによる感性の変化で苦しんでたのに、結局は変化後の感性に慣れてしまった。最前線でアニメを楽しめない自分が徐々に当たり前になっていき、映画や小説、ノンフィクションに自然と目がいくようになった。

そして現在は、「本や映画をメインに楽しみつつ、たまにめっちゃ気になるアニメは見る」っていう感じの、ぬるく片手間でインドアな趣味を楽しんでる日々になった。別に何者でもないけど、楽しんでる。

趣味でアイデンティティを保ったところで何者でもないことに変わりはない。そのことに気付けたので変な力が抜けた。かつては、毎クール全アニメを3話まではチェックして、スタッフと声優も全てチェックして、各話ごとに自己満足な考察をして楽しんでいた。そこまでしたところで結局は趣味。趣味をつきつめて仕事にするような人も一部にはいるけど、俺はそこまでいく前に時の流れっていうパワーに押し流されて、感性が趣味とズレた。

 

そんな自分の経緯があったんだけど、その経緯の中で一体どんな心理が動いていたのか、この本を読んだことでよく理解できた。自分の心理を俯瞰して観察できた。「あのときの俺はきっとこんなことを無意識に感じ取っていたんだろうなあ」って。

他人から見たらマジでどうでもいい話だと思う。でも俺の人生の主人公は俺なので、かつてアイデンティティの根幹をなしていた重要な趣味との、年を取ってからの付き合い方の模索を、改めて振り返って整理できたのはとても嬉しかった。この本のおかげだ。

僕と同じように、かつての重要な趣味との距離感を測りあぐねているオジサン・オバサンにこそ、読んでほしい本だと思った。以上。